日本の大学に危機感はあるのか

日本の大学に危機感はあるのか

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こんにちは。

Masaです。

「阪神地区大学国際化推進ネットワーク」シンポジウム

というシンポジウムに参加してきました。

このシンポジウムはサブタイトルが

やるかやらないか!
グローバル化にかける4大学の覚悟

ということで大阪大学、神戸大学、関西大学、関西学院大学の4大学が国際化に向けた覚悟を語るというある意味意欲的なシンポジウムでした。

 

基調講演は文科省の佐藤国際企画専門官。

この方は現在日本の教育界に旋風を巻き起こしている秋田の国際教養大学の設置準備・運営に携わった方で、今後の国際化、世界での競争力を見据えたときの大学を取り巻く課題について的確にお話くださいました。

かいつまんで言うとこんな内容です。

  • 日本は世界から仕事を勝ち取る必要がある。
  • しかし世界における日本の競争力を見たときに、問題となるポイントは外国語力と企業の大学への評価。
  • 企業も人材育成をする余裕がなくなり、その分大学の役割が大きくなっている。
  • グローバル対応も、以前は語学力が求められるだけだったが、今後は多様性のマネジメントやそこから生み出される創造性が求められるようになるなど質的変化が見られる。
  • グローバル対応に向けて、世界の大学では大学間での単位互換など交流ルールが地域地域で構築されつつあり、日本もこういった動きにルールメイキングの段階から入らなければ後手に回ることになる。
  • 大学の世界ランキングで日本は苦戦している。ランキングそのものについては実態を反映していないという意見もあるが、ランキングの持つインパクトは実際大きいので無視できない。
  • Moocは大学の在り方を根底から変える。特に先生の在り方が変わる。
  • 入学時期を4月に設定しているのは世界で4つの国だけ。国際化のためには柔軟な制度に変えなければならない。
  • グローバルでは自分は活躍できないと思っている生徒が増えている。生徒に自己肯定感、知的好奇心、知的筋肉を持たせるような教育が必要。
  • 留学しない3大理由は就職、お金、大学の制度。特に大学の国際通用性が必要。
  • 国際化を進めるには学生を取り巻く環境、特に親と企業のマインドセットを変えることが必要。

かなり端折っているので、うまく伝わらないかもしれませんが、具体的なデータと事例を豊富に取り入れたプレゼンで聞き応えがありました。

シンポジウムに後から登壇された経産省の方も思わず「文科省も変わった」と唸るほど、迫力と危機感を感じる課題設定であると思います。

 

シンポジウム後半は、産業界および産業界に近い人たちと、4大学の理事・副学長クラスが参加したパネルディスカッション。

ここでは産業側から大学側への注文、疑問が投げかけられ、それに対して大学側が答えるというスタイルでした。

私は長年、ビジネスの世界にいる人間なので、産業側から投げかけられた意見の多くにはとても共感できました。

特に私が共感した意見をまとめるとこんな感じです。

  • 大学が卒業生の質をどう保証するのか、どんな学生を輩出したいと思っているのか、その大学に入るとどんな人材になれるのかが見えない
  • 企業として欲しい人材は社会人基礎力としての好奇心、主体性、規律性を備えた人材。
  • 大学は良いプログラムを提供すれば良いと思っていて、勉強するのは学生の自己責任にしているのではないか。
  • 企業として学生に聞きたいのは、留学したという事実よりも、現地で何をして、何を学んだか、その経験をどう活かそうと思っているかということ。
  • グローバル化の時代では、海外に行って今までに経験したことのない仕事をすることになる。そのときにどう相手を理解し、コミュニケーションし、考え方を共有できるかが重要。異文化理解や多様な価値観をまとめる力が求められる。
  • 「研究・教育」と「大学経営」の双方が教授会の手にあるが、大きく環境が変わっている中、このままでは意思決定の仕組みが分かりにくいし、スピードも遅い。大学経営に関しては別の人が担当すべきではないのか。

これに対する4大学の理事・副学長の回答は・・・・

あらかじめ言っておきますと、正直私としては失望を感じる内容でした。

  • 国際化は正直遅れている。しかしこれまでずっと文系学長だったが、今回初めて理系学長になった。
  • ○○という組織を作った。
  • 既に国際化に向けて○○という制度を作るなどの動きはやっている。うちは出来ている。
  • 卒業生の質の保証は不十分だが、しかし、社会人基礎力として規律性なんてものは大学で育てるものではない。 

もっと他にも色々とお話がありましたので、確かに進んでいる部分もあるのかもしれません。
しかし、やや話が分かりにくかったのと、最初の十数分で疑問を感じてしまった私には、正直ネガティブな印象しか残らず、上記のような発言以外明確に思い出せません。(そういう意味では正確でないかもしれません。すみません。)

 

日本の大学という組織のことは私にもよく分からないところがあります。
責任あるお立場で言いたいことが言えないという事情があるのかもしれません。
しかし、それにしてもあまりに私が知っているビジネスの感覚と違うことにちょっとびっくりしました。

結果を出さなければならないのがビジネスです。
組織を作った、制度を変えたという話が多かったように思いますが、組織を変えようが、人を変えようが、結果が出なければ意味がありません。
自分たちがやっているつもりでも、評価をするのは学生であり、企業であり、世界のランキング作成者なわけです。
これらの評価が変わって初めて「やっている」と言える状態なのだと思います。
それまでは課題を見つけてつぶしていくことの繰り返しです。

もしかするとビジネスと大学とは違うのかもしれません。
しかし、少なくとも周囲に評価され、選んでもらわなければならない立場という側面は同じはずです。

ビジネスにおいて社長とか顧客担当者が「それは私たちの仕事ではありません」と言えば、お客さんは「あ、そう」と言って消えていき、二度と現れることはありません。

それでも以前はそれで通じたのかもしれませんが、環境が変われば、それに合わせて自身も変えていくことは当たり前です。
ダーウィンの進化論ではないですが、それができない組織は死あるのみです。

以前このブログで書いた通り、MOOCの出現で大学の存在価値が問われようとしています。
今後、大学が何を価値として提供しようとしているのか、何を社会に提案していきたいと思っているのか、今回のシンポジウムからは残念ながら明確に伺うことができませんでした。

今回の結果だけをもってただちに、日本の大学はダメというつもりは毛頭ありませんが、少なくとも私には大学側の強い危機感というものは感じられませんでした。

 

評価できるとすると今回のシンポジウムの設定です。
シンポジウム参加者からも多数の質問を受け付けたため、まるで公衆の面前で大学側が尋問をされるような形にもなったわけですが、そういう形になってでも意見を聞こうという姿勢を大学が持っていることは救いでした。
 

是非これからも大学が危機感を持ち続けられるような、こういった場を設定してもらいたいと思いました。

最後までありがとうございました。