MOOC(大規模オンライン無料講座)の動向
こんにちは。藤本です。
先週末New Education Expoというイベントに参加してきました。
アクティブラーニング、電子黒板、タブレットなど、最近教育業界でのITの進化はなかなか激しいものがあります。
そういうトレンドもあって毎年注目度も上がっているみたいです。
私のお目当てはMOOC(大規模オンライン無料講座)に関するセミナーでした。
MOOCに関しては以前私なりの見方をレポートしています。
このMOOCが教育界に与えた影響は大きく、日本でも今年日本版MOOC(JMOOC)が立ち上がりました。
今回のセミナーで得られた情報についてレポートします。(色々な立場の方からお話がありましたが、私なりの切り口でまとめてみます)
MOOCの動向
MOOCはFacebookを越える成長をしていると言われている。
利用対象者が当初想定している大学生以外にも広がりつつある。
・教員の利用
教員は他の評判の良い教員の講義を参考にするために利用している。
MOOCの場合は、きっちりシラバスを作ることが求められる。講義をMOOC化することによって講義設定を作らざるをえない状況になる。
またMOOCには学校名や肩書よりも講師の教育者としての実力が求められる側面があり、実際に無名の学校の講師がMOOC上では有名になるなどの現象も起きている。
・卒業生の利用
大学は学生を送り出すだけでなく、知の拠点として、卒業後も学び直しが必要なときには戻ってこられるような場であるべき。
そのときのツールとしてMOOCを使うという考え方が出ている。
実際に卒業生の利用もある程度ある。
・コミュニティカレッジでの利用
講義そのものは有名大学のMOOCで学び、反転授業(教室に集まってのディスカッションなど)を学校で行うという使い方が出てきている。
・小学生、中学生、高校生の利用
MOOC利用者には意外に低年齢層も多い。
利用者は歴史や物理など自分が興味のある分野を学んでいる。
自分が興味ある分野に関しては、中学、高校での学校の授業よりも大学レベルの授業を求めている。
また学生側にとっても単に大学の授業を学ぶ以上の利用意識が生まれつつある。
・雇用主へのアピール
現在のMOOCは単位は出ないが、修了証は出るため、その修了証を履歴書に添付するなどしてアピールをしたいという利用者がいる。
また成績優秀者にはMOOCが仲介役となって企業とのマッチングも行われている。
・最新情報を取得するプラットフォーム
エンジニアにとっていかに最新情報を取得できるかは死活問題。
ゆっくり大学に通って知識を得るよりもオンラインで必要な授業だけを取得するMOOCの方が最新情報を取得するには向いているという意識でMOOCを利用するエンジニア達がいる。
MOOCの棲み分け
coursera, edxのようなグローバルのMOOCと、Futurelearn(イギリス),Miriada(スペイン)のようなローカルのMOOCに分かれつつある。
JMOOCはローカルMOOCの位置付け。
ローカルMOOCの強みは、母国語で学べる環境。実情として英語で大学レベルの講義を理解出来る人は少数。
またエリアに関係なく普遍的な知識である自然科学、情報学系は、従来MOOCに向いていると言われるが、エリアによって異なることが多い人文、社会科学系の科目もローカルMOOCではカバーすることもできる。
これらの環境もあってローカルMOOCは従来グローバルMOOCの課題と言われた修了率に関しても高いと言われる。
実際にスペインのローカルMOOC、Miriadaは高い修了率が発表されている。
JMOOC
4月から開講し、現在6万人が登録。
東京大学の歴史の授業ではJMOOC初の反転授業を行った。
登録者の平均年齢46歳で、反転授業は13歳~81歳までの90名が参加。
今後のJMOOCについて、単位授与に関しては基本的に大学側が決めることであるが、JMOOCとしては当面出来ないし、やるつもりもない。
また授業の有料化もやるつもりはない。
会員間でのデータのオープン化はプライバシーに配慮しながら実施していく。
MOOCの今後
単位授与に関しては否定的見解が強い。
無料で実施を続けるためには持続性が必要である。
そのためには、既存の出来上がった授業をコストをかけずにオープン化していくことと、どこかでビジネス化していくことが必要。
ビジネス化の手段として考えられるのは、授業そのものの有償化、基本的な授業は無料だが詳細な分析など付加価値部分に関しては有料化する、コンテンツをライセンス化して販売するなどが挙げられる。
所感
MOOCに関してはやはり世界的な大きな流れで今後さらに成長しそうだと感じました。
学校、特に大学という組織は規模も大きく、かつ歴史の長い組織なので、なかなか自分たちでは変化しにくいものだと思います。
しかし、お客様である学生が変化すると変わらざるを得ないでしょう。
今回のお話で印象的だったのが、小学生や中学生もMOOCを利用して学んでいるということです。
もちろん、こういった人はまだ少数派でしょうが、確かに自分が興味ある分野に関してはどんどん学べるという環境があることは素晴らしいことです。
と同時に、これは教育の質に対して”目の肥えた”学生が増えてくるということでもあります。
教育のオープン化は変化できない組織にとっては厳しい結果をもたらすことになるでしょう。
そしてもう一つ大事なのはもう1つのお客様である企業側の変化です。
今回のセミナーではまだあまり語られていませんでしたが、MOOCの大きな機能の1つは企業と学生とのマッチングです。
これが本格化したり、採用の際に、MOOC修了証を添付する学生が増えてきたりすると、企業側でもいやでも意識が高まると思います。
こうして企業側と学生側の変化の結果、大学も変化をしていくということかもしれません。
JMOOCは面白いプラットフォームだと思います。
英語での授業はちょっと壁が高いという方は一度見てみてはいかがでしょうか。
最後までありがとうございました。
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