グローバル化の流れは止まる? 【書評】2030年世界はこう変わる

グローバル化の流れは止まる? 【書評】2030年世界はこう変わる

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こんにちは。

Masaです。

私が中学生くらいのときのことです。

父親がこんな話をしてくれました。

「お父さんのお父さん(私から見て祖父)の時代は鉄に携わる仕事が最先端だった。お父さんが仕事を始めた頃は石油が花形産業だった。お前の時代はコンピュータかな。」

この言葉を意識していたかどうか、私は進学した大学でコンピュータを専攻しました。

そして在学中の90年代後半には一気にパソコンの普及率が高まり、まさに父の予言通りIT業界が花形になる時代になりました。
私もそんな時代にSEとして自分のキャリアをスタートさせました。

経営コンサルタントにしても、留学アドバイザーにしても、企業とか人の重要な意思決定をサポートする立場にあるのなら、将来を見極める力というか、将来こんな世の中になるかもよ、という世界観を持つことはとても大事だなと思います。

「2030年世界はこう変わる」は、そんな意識で読んでみました。

 

◆アメリカ大統領のために作られたレポート

この本ですが、冒頭に書かれている通り、アメリカ大統領が国家戦略を練るための材料として米国国家情報会議が作っているレポートが元になっています。

そういう意味でアメリカから見た世界という視点ではありますが、世界中のエリート層が見ている情報であり、今後の世界を考える上で読んでおくべき本です。

(ちなみに現在、今後の世界変化について書かれた本を数冊読んでいます。それぞれ視点が異なるので、多面的な世界観を養うのにはいいです。これらの書評も後日書きたいと思います。)

 

◆世界の潮流を考える前提となるメガトレンド

この本の出発点は、メガトレンドです。
メガトレンドとは、将来を占うのにどうしても無視できない世界規模の大きな構造変化です。

この本では

①個人の力の拡大(中間所得者層が増える)
②権力の拡散(先進国の力が相対的に弱まり、新興国の力が相対的に強まる)
③人口構成の変化(人口増加、高齢化、移民増加、都市の巨大化)
④食糧・水・エネルギーの連鎖(水・食糧不足、エネルギー革命による輸出入国の立場の逆転)

という4つを挙げています。

現在読んでいる他の本でも、同じところからスタートする本が多いですし、それぞれに数字の裏付けがあるので、大規模な戦争や、巨大な隕石が落下するなど不測の事態にならなければ、確かにそうなる可能性が高いのだろうと思います。

これらの変化を見るだけで、今の時代は複数の変化(主には人口増加に起因するものが多いが)が同時に起こりつつあり、過去の人類の歴史の中でも特筆するほど大きな変化の時代であることが実感できると思います。

 

◆視野拡大のために知っておきたい将来シナリオ

本書では更に、この4つのメガトレンドに6つのゲームチェンジャーと呼ぶ最近の傾向を掛け合わせたものが将来起こりうるシナリオとしています。

最後に、無数に出来上がる将来シナリオの中から代表的な4つのシナリオを紹介していますが、この4つのうち2つのシナリオが、私としては、興味深いものだったのでご紹介します。

1.欧米没落型

米国が財政問題、欧州がEUの協調路線の崩壊に端を発して、世界のリーダー役から降りる
→欧米諸国が内向き化を強め、グローバル化の流れが止まる
→不安定地域の統治力や貧困国への支援が減り、経済低迷、情勢緊迫化

グローバル化の流れというのは、ある意味欧米が主導して作っている部分があるというのは頭では理解していましたが、この流れが止まることもあり得るというのは、ちょっと盲点でした。
私も当たり前のように今後もグローバル化が進行することを前提にして考えていたところがありましたが、そうでないシナリオがあることも考えられるということです。

2.非政府主導型

エリート層や中間所得者層が増えることや技術の進歩で国を越えた世論が形成されやすくなる
→リードするのは国境をまたいだ活動ができる非政府機関(メガシティ代表者、多国籍企業、NGOなど)や個人
→国や政府がなくなることはないが、その役割と影響力は相対的に低下

やや楽観的なシナリオにも見えますが、インターネットの普及や人材交流の活発化によって、国境の壁が低くなっている流れからするとあり得るのかなと思います。
よく国境の壁が低くなると世界がフラットになって均一になるというイメージを持たれることがありますが、すぐに均一になることはないでしょう。
それよりは、国という枠組みが一旦外れるけど、今度は同じ価値観を有するもの同士が集まるというシナリオの方が現実的で説得力があります。
こういう時代になったときに、少なくとも自分の価値観が表現できることは大事だと思います。

 

◆最後に、日本の存在感

本書全体を通じて、日本に関する記述は極めて少ないです。

アメリカ目線で世界を見たとき、少なくとも本書くらいの分量に内容を要約したときには、日本は特筆すべきことがない、ということです。

個人的には日本の存在感をどのように出すか、ということを考えたいところですが、一方で世界から見たときの日本の存在感がこの程度、ということを客観的に知っておくのも(それをどうとらえるかは別として)、また重要なことだと思いました。

 

毎日過ごしていると、目の前のことや短期的なことに目を奪われがちですが、一旦視点をグローバルの規模に引き上げてみるためには良い本だと思いました。

最後までありがとうございました。