大学の授業料無償化について
こんにちは。藤本です。
正月早々に入って来たニュースの1つが、ニューヨーク州が州内の公立大学の無償化に乗り出すというニュースでした。
記事によるとローンを抱える学生の率の増加が議論の1つのきっかけになっているようです。
確かにアメリカやカナダの大学の学費は高騰しています。
私が留学した10年前と比べても明らかに高くなっており、「留学は費用対効果ではない」と言いつつも、例えば私が卒業したトロント大学のMBAは、現在の留学生向け学費が2年間で10万ドル以上(現在のレートで880万円)と、ちょっと普通の感覚では支払えない額になっています。
私が留学相談を受けた中でも、費用の話は必ずと言ってよいほど出てきており、中には費用のことだけを考えて授業料が無償の国への留学(フィンランドやドイツなど)を考えたり、大学に入学できる力があるのにカレッジに留学を考えたり、場所や内容を度外視して授業料が安かったり奨学金が充実した大学を受験したり、といった方たちがいます。
もちろん、その留学先で得られることもあると思うので、すべて悪いというわけではないですが、(ほとんどの人にとっては)一度しかない留学の機会を、費用のためだけに、本来の希望とは異なる留学先にするという現実に、どうかなと思うところもあるわけです。
そこに出てきたのが、この無償化という議論です。
この大学無償化という議論は以前からあり、実際に無償化が実施されている国もヨーロッパを中心にいくつかあります。
加えて、2-3年前からMoocというオンライン無料プログラムが一般化したこともあり、その議論に拍車をかけているように思います。
上記のような授業料の高騰問題や学生ローンの問題を解決するには無償化ってどんどん進めればいいじゃん、と思いたくなりますが、問題はそう単純ではないですね。
先ほどのMoocは無料というところが売りではあるのですが、その代わりにプログラム修了率が10%にも満たないというのが現状のようです。
そう、人間は、ある程度痛い思い(この場合は出費)をしなければ、学ぶ意欲が下がってしまうんですね。
無料で与えられるものを本気で学べるという人はごく一握りなんです。
それに、大学側も、学生から授業料を得るという仕組みが無くなると、学生がお客さまという感覚が失われて、教育の質が下がるとも言われています。
そうなると長期的に見ると、無償化というのは国の教育レベルを引き下げかねない政策ということになってしまいます。
なので私個人の意見としては、めちゃくちゃ高い学費か、無償かという二者択一ではなくて、その中間くらいが良いのかなと思います。
例えば、政府が補助を出しつつも、でもそれは全額ではなく、一部を学生が負担する、とか。
一旦は学生個人が支払うが、無事に卒業出来たら、返額される、とか。
特に返額されるケースは、卒業後にお金が必要になることも多いので、ちょっと嬉しいですよね。
そんな制度が出来ると良いなと思います。
ちなみに、冒頭のニュースを受けて、カナダでも無償化の動きがあるかというと、今のところは特に見られません。
が、もしアメリカで上手くいったならカナダも追従する可能性は高いですね。
優秀な学生がアメリカに流れていってしまう可能性が高いわけですから。
さらに言うと、上記のニューヨークの無償化の話は州在住の学生に話が限られています。
留学生については、議論になっていないようですが、どうなるんでしょうね。
大学教育は国の輸出産業であるという側面があります。
つまり、教育というコンテンツを売って、外貨を稼ぐというビジネスモデルですね。
カナダの場合は、教育は州レベルに任されておりその側面がやや弱いですが、世界ランクトップクラスの学校が多いアメリカやイギリス、国として教育を管轄しているオーストラリアなどはその側面がある程度あるので、留学生に対して無償化するという動きにはなかなか発展しないかもしれません。
そんなことをニュースを見ながら考えました。
この動きがどういう影響をもたらすか見守っていきたいと思います。
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